労働審判の「当事者」と「対象となる紛争」は、何か?

労働審判委員会

概説

労働審判官1名、労働審判員2名で、構成されます。

労働審判官

裁判官が担当します。この労働審判官たる裁判官が、主導的な役割を果たします。

労働審判員(使用者側出身)

専門的な労働関係の経験を有する者が、担当します。使用者側の母体の出身です。

労働審判手続中、誰が使用者側出身かは、明らかにされません。

注:この労働審判員は、全国的な労使団体が選定し推薦した労使実務家の中から、裁判所が選任します。この選定・選任については、日本労使関係研究協会が実施する「企業内個別労働紛争の防止・解決のための研修」の履修が、重要参考資料とされています。

労働審判員(従業員側出身)

専門的な労働関係の経験を有する者が、担当します。従業員側の母体の出身です。

労働審判手続中、誰が従業員側出身か、明らかにされません。

注:この労働審判員は、全国的な労使団体が選定し推薦した労使実務家の中から、裁判所が選任します。この選定・選任については、日本労使関係研究協会が実施する「企業内個別労働紛争の防止・解決のための研修」の履修が、重要参考資料とされています。

労働審判委員会の合議について

労働審判委員会の合議においては、労働審判官も労働審判員も、平等な評決権をもち、決議は、過半数の意見によります。

また、評議は秘密とされています。

注:労働審判員または労働審判員であった者が、正当な理由なく、評議の経過または労働審判官もしくは労働審判員の意見もしくはその多少の数を漏らした時は、30万円以下の罰金に処せられます。

注:労働審判員または労働審判員であった者が、その職務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときは、1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられます。

労働審判手続の指揮について

労働審判手続の指揮は、労働審判官が行います。

当職の経験からしても、労働審判手続中、労働審判員は、若干の質問などをする程度です。

申立人と相手方

申立人

従業員または元従業員であることが多いです。

なお、東京地裁では、従業員または元従業員が10名くらいいても、受理して併合審理している例もあります。

申立人代理人

原則として、弁護士が担当します。

相手方

使用者(会社、法人)であることが多いです。

相手方代理人

原則として、弁護士が担当します。

管轄

原則として、地方裁判所です。

①相手方の住所、居所、営業所もしくは事務所の所在地を管轄する地方裁判所

②個別労働関係民事紛争が生じた労働者と事業主との間の労働関係に基づいて当該労働者が現に就業し、もしくは最後に就業した当該事業所を管轄する地方裁判所

③当事者が合意で定める地方裁判所

対象となる紛争

対象となる紛争

個々の従業員と、使用者との間の権利紛争が対象となります。例えば

①雇用関係の終了(解雇、雇止め、退職など)
②金銭関係(賃金、残業代、退職金等の請求)
③雇用関係全般(配転、出向など)

などです。

対象とならない紛争

労働組合と使用者との間の団体的労使関係上の紛争は、労働審判の対象となる紛争には該当しません。

理由は、このような紛争は、労働委員会が対象としているからです。

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